女性の起業に役立つ助成金と支援制度を紹介!

起業する際に準備しておくべき事項の一つとして、資金確保が挙げられます。

資金を自己資金でまかなうことができれば問題ありませんが、それだけでは足りないという場合も十分に考えられます。

そんなときに利用できるのが、起業者を対象としている各種の助成金や支援制度です。

本稿では、それらの制度の中でもメジャーなものを見ていきたいと思います。

あわせて、女性など、特定の対象者に絞った制度もありますので、それについても見ていきたいと思います。

起業時における資金確保の重要性

そもそも、起業する際にどの程度の資金が必要なのでしょうか。

大きく分けて、3つの種類の費用が必要になると思われます。

  • ①事業を行うための費用
  • ②当面の運転資金
  • ③会社設立自体に要する費用

順に見てみましょう。

事業のための費用

個人で、しかも自宅で週末起業といった形で起業する分には、それほどの資金は必要ないかもしれません。

ただ、それでもパソコンや電話・ファクシミリを準備したり、ホームページを立ち上げるためのレンタルサーバーの契約をしたりと、それなりの費用はかかるでしょう。

更に、本格的に起業しようとすると、その業種にもよりますが、自宅とは別に事務所を借りたり、電話回線やインターネット回線を引いたり、パソコン・コピー機等の電子機器を導入したり、また、店舗設備が必要な事業の場合にはその店舗の内装工事等も必要になってくるでしょう。

これらを準備するには、どうしても、相応の初期投資が必要になってきます。

運転資金

事業を開始したからといって、すぐに売上があがるわけではありません。

しばらくの間は、思ったほどの売上がないということも多いでしょう。

そのような期間の運転資金も準備しておく必要があります。

会社設立に要する費用

会社組織で起業する場合には、会社設立のための費用も必要となります。

現在、会社設立時の資本金の制限はありませんので、資本金1円でも会社を設立できます。

ただ、実際に事業を行うためには、1円企業は社会的信用も得られないためおすすめできません。

少なくとも100万円程度の資本金は必要と考えるべきでしょう。

この資本金に相当する額は、通常、起業者が株式を出資することになりますので、起業しようとする人はそれだけの資金を準備しておく必要があります。

そのほかに、会社設立に際しては定款作成費用や、登記のための費用として以下の費用が必要となります。

  • ①公証人の認証の手数料:5万円
  • ②定款を文書で作成する場合の印紙代:4万円(電子定款の場合は印紙は不要)
  • ③登記の登録免許税:15万円
  • ④そのほか、印鑑証明書等の取得費用
  • ⑤会社設立の手続きを弁護士、司法書士、行政書士等に依頼した場合の報酬

資金準備の方法

起業前に自分で資金を準備できれば問題ありません。

自己資金で足りない場合には金融機関等からの借入を考えることになります。

しかし、起業時点では信用がないため、実際に金融機関からの借入は難しいのが現状です。

最近では、スタート・アップ投資等も増えていますが、現実にかかる金額分の投資を受けるのも難しい部分があります。

ほかには、クラウドファウンディングでの資金調達という方法も考えられます。

そして、もっとも、一般的といえるのが公的機関等が行う起業に対する助成や支援制度を利用して資金を調達する方法です。

助成・支援制度の種類

助成金・補助金

起業に対する支援制度として、助成金や補助金という制度があります。

これは、実際に一定の金銭を支給する方法です。

助成金等の支給を受けた場合、後日、これを返済する必要はありません。

その意味で、非常にメリットが大きい方法といえます。

助成金や補助金交付を行っているのは、国(経済産業省や厚生労働省)、地方公共団体、各種民間団体等です。

なお、助成金と補助金については、助成金があらかじめ定められた一定の要件を満たしていれば基本的に交付されるのに対して、補助金の場合には申請に対して審査があり、その審査において補助金を交付することが妥当と判断された場合に限って交付されるという違いがあります。

そのほかの支援制度

助成金や補助金のように現金を給付するものではなく、起業者に対して、低金利や担保・保証人なしで資金を融資する制度もあります。

これらの制度では、さらに、融資後一定期間の据置期間が定められているものもあります。

これにより、事業が軌道に乗るまでの一定期間は、返済の猶予を受けることができ、事業に集中できることになります。

起業者全般が利用できる支援制度

以下は、起業者全般に対する支援制度です。

もちろん女性も利用可能です。

全国的に行われているものと、東京を中心に地方自治体レベルで行われているものをピックアップしてみました。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」

参考リンク:日本政策金融公庫の「新創業融資制度」

新たに事業を始める人、及び、事業開始後税務申告を2期終えていない起業者に対して、最大3,000万円(うち運転資金は1,500万円)まで、無担保・無保証人で資金を融資する制度。

助成金ではありませんが、起業時の初期費用をこれによってまかなうことが可能となります。

新規開業資金(新企業育成貸付)

参考リンク:「新規開業資金(新企業育成貸付)」

日本政策金融公庫が行う国民生活事業の一環。

新たに事業を始める方、事業開始後概ね7年以内の人に対する融資制度。

融資限度額は7,200万円(うち、運転資金は4,800万円)

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

参考リンク:「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」

ベンチャー起業、スタート・アップ企業等に、財務体質強化や、ベンチャーキャピタル、民間金融機関からの資金調達力強化の支援を行う制度。

一定の融資制度の対象となる人に対して、自己資本となる融資を行う制度

東京都のクラウドファウンディングを活用した資金調達支援

参考リンク:「東京都のクラウドファウンディングを活用した資金調達支援」

起業者に対してクラウドファウンディングによる資金調達についての助言等を行うとともに、資金調達者がクラウドファウンディング事業者に支払う手数料の1/2(上限30万円)を補助する制度。

対象は東京都内で行う計画の事業で、創業計画中の者、又は、創業5年未満の者で、新製品・新サービスを創出する者とされています。

東京都中小企業制度融資『創業』

参考リンク:「創業」

中小企業に対して、事業に必要な資金を円滑に調達してもらえるようにするために、東京都、東京信用保証協会、金融機関の三者が協調して資金を供給する制度。

対象は新規の創業資金、創業後の事業資金で、東京都内に事業所があり、東京信用保証協会の保証外相業種を営む中小企業で、現在、創業計画を有している個人、又は、創業後五年未満の中小企業者等です。

融資額は3,500万円で返済期間は設備資金10年以内、運転資金は7年以内(いずれも据え置き期間1年間を含む)とされています。

更に、区市町村の認定特別創業支援事業による支援、または、商工団体等による創業支援を受け、証明を受けた場合には融資利率の優遇もあります。

創業助成金(東京都中小企業振興公社)

参考リンク:「創業助成金(東京都中小企業振興公社)」

創業のモデルケースの発掘や、事例の発信等により、東京都内での創業に挑戦する機運の醸成につながる事業に対して助成金を交付する制度。

対象は、都内で創業を予定している人、及び、創業して5年未満の中小企業の内、一定の要件を満たした人となります。

助成期間は決定日から1年以上2年以下で。

助成限度額は100万円以上300万円まで。

助成対象となる経費(従業員人件費、賃借料、専門家謝金、産業財産権出願・導入費、広告費、備品費)の2/3以内を助成してくれます。

2019年度の申請受付は既に終了していますが、2020年度も実施予定とのことですので、情報をチェックしておく必要があるでしょう。

小規模事業者持続化補助金

商工会議所または全国商工会連合会の支援を受けて、経営計画(事業計画書、創業計画書)を作成することにより、50万円の補助金を受けることができる制度。

対象は卸売業・小売業・サービス業の場合は従業員5人以下、それ以外の事業の場合は従業員20人以下の小規模事業者です。

経費の2/3まで、最大50万円の補助金を受けることができます。

令和2年の実施については、まだ、確定していませんが、経済産業省の予算には盛り込まれているということで、令和2年も実施されることが予想されます。

例年通りであれば3月から4月頃に募集が始まるものと思われます。

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

参考リンク:「地域中小企業応援ファンド」

独立行政法人中小起業基盤整備機構(略称:中小機構)と各都道府県の公共団体・金融機関等が共同出資して組成される地域独自の官民ファンド。

各地の農林水産物や伝統技術を活用する商品開発・販路開拓の取り組みなどを支援する制度で、主に、研究・商品開発、需要の開拓にかかる費用を助成対象とします。

対象者は中小企業者および創業者、これらの支援機関、NPO法人等。

助成の具体的な内容は、各地域毎に決定されますが、平均的な助成率は1/2〜1/3程度で、なかには、複数年にわたって助成を受けられるものもあります。

中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)

参考リンク:「中途採用等支援助成金」

厚生労働省が行う助成。

これから起業を行う中高年齢者(40歳以上)の人が、起業によって自らの就業機会の創出を図るとともに、事業運営のために必要となる従業員(中高年齢者等)の雇い入れを行う際に要した雇用創出措置(募集・採用、教育訓練の実施)にかかる費用の一部を助成するもの。

雇用創出措置助成分は、起業者が60歳以上の場合は雇用創出措置に要した費用の2/3(上限200万円)、起業者が40歳〜59歳の場合は1/2(上限150万円)とされています。

さらに、雇用創出措置助成を受けたあと、一定期間経過後に生産性向上が認められた場合には、雇用創出措置助成により支給された金額のさらに1/4が、生産性向上の助成金として支給されます。

女性を対象とした支援制度

以下に挙げるものは、女性を対象とした支援制度です。

ここでも全国的なものと、東京を中心とした関東圏の地方自治体のものをピックアップしました。

女性、若者/シニア起業家支援資金

参考リンク:「女性、若者/シニア起業家支援資金」

経済産業省が、女性・若者(35歳未満)・シニア(55歳以上)の起業家で、新規開業して概ね7年以内の方に対して日本政策金融公庫の低利融資制度による融資を行う制度。

融資限度額は7,200万円(うち、運転資金は4,800万円)とされています。

生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)

参考リンク:「生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)」

生活衛生関係の事業を創業する人、及び、創業後概ね7年以内の方に対して、特別な資金を融資する制度。

対象者は、振興計画認定組合の組合員、又は、女性もしくは35歳未満か55歳以上の人とされています。

東京都創業サポート事業

参考リンク:「東京都創業サポート事業」

東京都内での女性・若者・シニアによる地域に根ざした創業を支援するために、信用金庫・信用組合を通じた低金利・無担保の融資と、地域創業アドバイザーによる経営サポート(事業計画アドバイス、決算書作成アドバイス等)を組み合わせて提供する制度。

対象は女性、若者(39歳以下)・シニア(55歳以上)で、都内における創業の計画がある方、及び、創業後5年未満の方で、地域の需要や雇用を支える事業を行う起業者とされています。

融資限度額は1,500万円(運転資金のみの場合は750万円)で、金利は固定金利で1%以内。

返済期間10年以内、据え置き期間3年以内とされています。

若手・女性リーダー応援プログラム助成事業

参考リンク:「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」

東京都中小企業振興公社が行う助成事業で、女性または39歳以下の若手男性による商店街での開業について助成する制度。

2019年度の募集は既に終了しており、2020年度については現時点では未定です。

助成されるのは、事業所整備費(400万円)、実務研修受講費(6万円)、店舗賃借料(1年目月額15万円、2年目月額12万円)で、最大730万円とされていました。

横浜市の女性おうえん資金

参考リンク:「横浜市の女性おうえん資金」

横浜市信用保証協会が行う保証制度。

1ヵ月以内に横浜市で個人事業を開始し、又は、2ヶ月以内に横浜市内で会社を設立して事業を開始する方、及び、既に横浜市内で事業を開始して5年未満の人を対象として、3,500万円まで保証するものです。

保証期間は運転資金、設備資金の場合とも10年間とされています。

埼玉県の女性経営者支援資金(女性起業家支援貸付)

参考リンク:「埼玉県の女性経営者支援資金(女性起業家支援貸付)」

埼玉県が行っている女性や若年者(申込時点で35歳未満)向けの融資制度。

開業前の人、及び、開業から5年未満の人が対象です。

設備資金として1,500万円、運転資金として1,500万円(併用の場合は合計で1,500万円)まで、無担保・無保証で融資する制度です。

期間は、設備資金は最大10年、運転資金は最大7年、利率も1%以下の固定金利(令和2年3月31日までの実行分)とされています。

茨城県の女性・若者・小会社創業支援融資制度

参考リンク:「茨城県の女性・若者・小会社創業支援融資制度」

茨城県が行っている新たに事業を開始する女性、若者(申し込み時点で35歳未満)、障害者(成年後見制度理紆余者以外の障害者手帳所持者)向けの低利の融資制度。

対象者は、茨城県内に住所または居所を有する個人で1ヵ月以内に事業を開始する個人、又は、2ヵ月以内に会社を設立して事業を開始する者、県内に事業所を有していて事業開始から5年を経過していない者です。

融資限度額は設備資金3,500万円、運転資金3,500万円、併用の場合は上限3,500万円。

返済期間は設備資金のみの場合は10年(据置期間2年)、運転資金のみまたは併用の場合は7年間(据置期間1年)とされています。

女性新ビジネスプランコンペティション

参考リンク:「女性新ビジネスプランコンペティション」

日本政策投資銀行が行っているビジネスプランのコンペ。

大賞受賞者には事業奨励金として1,000万円が支給されます。

あわせて、受賞者が希望した場合には、外部の起業経験者等によるサポート等、計画実施のための事後支援も行われます。

応募資格は、①女性経営者による事業であること、②事業開始5年以内の事業であること。

現在募集を行っており、2020年1月30日(17時)が応募期限。

2月に書類による一次審査、2月下旬から3月に面接による二次審査、6月に採集審査が行われて、7月に結果発表及び表彰式が行われる予定となっています。

一般社団法人日本起業アイデア実現プロジェクトが行う「女性起業チャレンジ制度」

参考リンク:「女性起業チャレンジ制度」

起業にチャレンジする女性に対して、資金面を含めて支援するプロジェクトとして民間団体が実施している制度。

現在、第6回「女性起業チャレンジ制度」の募集が開始されており、2020年1月31日が応募締め切りとなっています。

応募資格は、新しく起業する女性、又は、既に起業していて新しいアイデアで事業を拡大しようとしている女性で、「夢と情熱」「超戦力と行動力」「粘り強く、諦めない」「発想力としなやかさ」「自分とお客様、社会の喜び」という起業家に求められる5つの指針に同意される人。

選考の結果、最大5名にグランプリとして、支援金各200万円をそれぞれに支給します。

まとめ

以上、国と地法公共団体、さらには、民間団体等が実施している女性を対象とした企業支援プロジェクト等についてみてきました。

ここでは、主に、国と東京都および関東周辺の地方公共団体のものに限定してみてきたわけですが、おそらく、別の都道府県や、市区町村で、それぞれ起業に対する助成や支援制度があると思われます。

起業を考えている人は、是非とも、自分が居住している都道府県、市区町村、さらには、起業しようとしている地域の情報を集めてみてください。

きっと利用できる支援制度が見つかると思います。

これらの制度を有効に活用することによって、起業における大きなハードルである資金調達が余裕を持って行えることでしょう。

そしてそれが起業成功の重要な要素となるのではないでしょうか。

タグ一覧