組織開発と人材開発の違い|詳しい手順やわかりやすい事例もご紹介

組織開発や人材開発は似ているように感じるかもしれませんが、実はアプローチの方向や、手法が全く異なるものです。

今回は組織開発と人材開発の違いから、基本的な手順、それぞれの事例まであわせてご紹介します。

とくに他社の取り組み事例は、どのような課題に対して効果があったのかが分かるため、ぜひ参考にしてみてください。

組織開発と人材開発

組織開発と人材開発は、どちらも「人」が大きく関わる施策であり、組織の成長を図るものです。しかし、それぞれでアプローチの仕方は全く異なります。

これからひとつずつ詳しく解説を行いますが、簡単にお伝えすると組織開発は人との「かかわり」を深めて組織全体のパフォーマンスを向上させること、人材開発は研修などを通して個人の「キャリア」や「スキル」を高めて組織に活かすことです。

組織開発とは

組織開発で主に目指すところは、組織全体をより良くすること、組織全体のパフォーマンスを向上させることです。

個人の能力も大切ですが、組織開発ではキャリアやスキルの向上を目指すわけではなく、もともと持っている個人の能力を最大限に引き出し、チームワークを高めていくようなイメージというと分かりやすいでしょうか。

上司と部下、同僚などの信頼や関係性を深めることで、ひとりひとりの主体性を引き出し、結果として組織全体にポジティブな変化が見られるようになります。

人材開発とは

一方で人材開発では主に「個人の能力」に対してアプローチを仕掛けます。例えば、スキルアップの研修を打ったり、キャリア開発を行ったりといった内容です。

・OJT
・実習
・研修
・今後のキャリアに関するヒアリング

これらのように、「育成」や「教育」に焦点を当てて施策を進めることで、個人の能力向上を目指します。

ただし、能力を向上させても、十分に発揮できる環境でなければあまり意味がありません。人材開発を行うだけでなく、その後の道もしっかりと作ってあげることも大切です。

  • 組織開発と人材開発の違い

冒頭でも似たようなことをお伝えしましたが、組織開発と人材開発の大きな違いは「関係性」にアプローチをかけるのか「個人」にアプローチをかけるのかということです。

最終的には組織の変革に繋がるものではありますが、現在の自社の課題にあわせて組織開発か人材開発かを選択するとよいでしょう。

組織開発の基本的な手順

一般的な組織開発の動きは、大まかに以下の5ステップに分けられます。

  1. 組織の目的や理念を明確にする
  2. 問題や課題を洗い出し、施策を固める
  3. 小規模で施策を実行する
  4. 効果検証と再実行を行う
  5. 施策を定着、浸透させる

これらを見ると、単純な流れに感じるかもしれません。

しかし各フェーズの中でも、経営戦略や組織のシステムなどの可視化しやすい部分と、人間関係や人材に関わる内面的な部分、それぞれに対して丁寧にアプローチをかけていくことが重要です。

組織開発は施策をチーム内に浸透させ、効果検証を繰り返しながら、ブラッシュアップさせていく必要があるため、必然的に長期間で大規模な施策となります。

まずは明確な目的を組織内に共有し、長期的な計画を立て、時間をかけて進めていくとよいでしょう。

以下の記事では、組織開発の手順についてひとつずつ詳しく解説していますので、よろしければあわせてご覧になってみてください。

組織開発に役立つ基本的な手順とは|わかりやすいフレームワークや企業の事例を紹介

組織開発の成功事例

組織開発は中小企業から大企業まで、さまざまな課題を抱えた企業が実践しており、その事例は自社で組織開発を行うにあたり、参考になることもあるでしょう。

今回は「株式会社アイ・オー・データ機器」と「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」で行われた組織開発の事例をご紹介します。

株式会社アイ・オー・データ機器

株式会社アイ・オー・データ機器は、スマートフォンやパソコンなどの周辺機器を販売するメーカーであり、情報化社会に貢献するベンチャー企業です。

業界の変化がとても早いといわれている中、株式会社アイ・オー・データ機器は「最先端の技術を追求するのではなく、今ある技術を活かしてより便利な製品を作る」という方向性を大切にしてきました。

しかしある年「作れば売れる」時代が終わったとされ、業績が悪化したことを機に、社員たちの課題に気がついたのです。

自社の理念や方向性を目指すためには、主体性や自主性のある社員を育成しなければならないと考えたアイ・オー・データ機器は、対話合宿やカルチャーブックの配布をしたほか、組織行動調査の設計や実施を進めました。

その結果、社内で価値観や認識のズレが生じていることが判明し、それらに基づいた施策を実施。価値観や理念の浸透や、エンゲージメントの向上などに成功しています。

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

続いては、NTTグループの主要企業のひとつである「株式会社エヌ・ティ・ティ・データ」の事例です。

株式会社エヌ・ティ・ティ・データでは、保険や医療のノウハウを活かすべく「ライフサポート事業部」を発足しました。

1200名以上の社員が集まったライフサポート事業部では、多くの社員が目的を理解してはいるものの、具体的なアクションを起こせないといった課題を抱え、一体感に欠けていたそうです。

そこで、ライフサポート事業部を集めた大規模な「社員フォーラム」を実施。組織の目的の共有や、社員間とのコミュニケーションを通して、足並みを揃え一体感のあるチームが生まれたといった事例となります。

社員フォーラムを通した共通体験が、大きな鍵となったようですね。

人材開発の基本的な施策

ばらついた組織を統一させる組織開発とは違い、人材開発は個人へアプローチをかけていきます。そのため、組織開発よりは難易度が低く感じられるかもしれません。

人材開発で行われる具体的な施策は、主に以下のような内容です。

・OJT
・資格取得や書籍による自己啓発
・社内外での各研修
・人事部門による定期的なヒアリング

組織開発にもいえることですが、これらを実施するには少なからずリソースを割かなければなりません。人材開発においては、リソースに加えて講師の指導力も重要となります。

ひとりひとりに合った計画を立てていくため、比較的進めやすいのがメリットですが、自社の指導力やリソースによっては、外部講師を招く必要性も出てくるでしょう。

人材開発の成功事例

人材開発の事例では「三菱重工業株式会社」「キャノン株式会社」の2社についてご紹介します。

前者は外部のコンサルティングを導入、後者は自社で長年積み重ねている人材開発の例となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

三菱重工業株式会社

三菱重工業株式会社の課題は、社員のエンゲージメントの低さや、若手層による成長の機会不足といった内容でした。

そこで、人材開発専門のコンサルティングを導入し、部長と課長向けのキャリアマネジメント研修や、キャリア面談時のマニュアルを提供するサービスを利用。

社員ひとりひとりではなく、はじめに社員のキャリアに影響する場面の多い「部長・課長」にキャリアマネジメント施策を実行したのです。

上司のマネジメント力向上を、専門の外部サービスに依頼することで解決し、結果として社員たちのキャリア形成の成功に役立てた事例となっています。

キャノン株式会社

キャノン株式会社の人材開発は1930年代からはじまっていました。

OJT中心の教育からはじまり、その20年後には技能研修所を設置。検定や研修制度を整えながら、1970年代には専門の研修センターを設置し、独自の研修開発がスタートするなど、時代や自社の状況に合わせて柔軟に施策を変化させ、都度整備を行っていたようです。

事業が多角化した際には、研修の中身をより専門性の高いものへと変更し、やがて組織や風土の変革にも着手をはじめています。

その背景には企業理念である「共生」を目指す社員たちに向けて、「自発」「自覚」「自治」の3つを行動指針とすべく、徹底的に教育体制の整備を続けていたということがあります。

まとめ

組織開発と人材開発の違いはお分かりいただけたでしょうか。

「個人」へのアプローチなのか、組織内の「関係性」へのアプローチなのかが、分かりやすく大きな違いといえるかもしれません。

いずれかを実施するにしても、簡単に手早くできるようなものではありませんが、組織開発や人材開発に成功している企業は、変革とともに大きな成長を遂げているように見えます。

自社に問題を感じている方は、ぜひ施策の実行を計画してみてはいかがでしょうか。

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