雇用維持に困っている方必見|雇用調整助成金とは?申請方法や金額、延長された特例措置についても詳しく解説

新型コロナウィルス感染症の流行に限らず、景気の変動によってやむを得ず事業縮小を強いられることがあります。

そこで役立つのが「雇用調整助成金」と呼ばれる厚生労働省の支援制度です。従業員の解雇は、従業員の士気の低下や経営効率の低下へと繋がる原因となりかねません。

助成金を利用した休業や教育訓練の実施、出向によって従業員の意欲向上だけでなく、今後の事業安定にも大いに役立ちます。

また、雇用調整助成金は、新型コロナウィルス感染症の影響による事業縮小にも対応するため、特例措置を新たに設けました。

現在景気の変動によって従業員の解雇を考えている事業主の方は、ぜひ前向きに検討してみてください。

雇用調整助成金とは?

景気変動の影響を受け、やむを得ず従業員解雇の選択肢に迫られる事業主が、従業員に対し「休業」「教育訓練」「出向」のいずれかを選択した場合に金銭的支援を受けられる制度です。

解雇は従業員の士気低下へと繋がり、経営の効率ダウンの原因となります。
助成金を利用して雇用維持を選択することで、従業員の士気向上や景気回復後の安定した経営を目指しましょう。

2021年9月時点では、新型コロナウィルス感染症の流行による特例措置も設けられています。

なお、学生アルバイトなどの雇用保険被保険者に当てはまらない場合は「緊急雇用安定助成金」と呼ばれる制度が用意されています。

今回ご紹介している雇用調整助成金と同様に申請することが可能なので、雇用保険対象外の従業員の対応に悩まれている方は検討してみてくださいね。

雇用調整助成金についてのホームページはこちら

雇用維持のメリット

雇用解雇をすると一時的な人件費削減にはなりますが、景気回復後の新たな採用や訓練活動にて経費の負担が増加してしまいます。

雇用調整助成金の対象となっている教育訓練は、現在の業務内容だけでなく配置転換に必要な講習も対象に含まれています。
上手く活用すれば、景気回復後の事業展開がスムーズに進められることでしょう。

雇用調整助成金を利用することで、経費の負担を抑えながら円滑な立て直しを図ることが可能です。

労使間の信頼や士気向上のためにも、雇用解雇ではなく休業や教育訓練の実施などによる積極的な雇用維持に努めることをおすすめいたします。

対象の雇用調整は3種類

具体的に雇用調整とはどういった内容なのかを解説します。

対象となる雇用調整の対応は「休業」「教育訓練」「出向」の3種類です。現状を把握し、事業の状態に合った雇用調整を行いましょう。

休業

働く意思や能力のある従業員が、働けない状態になってしまった場合に利用します。

疾病などによって働く能力がない従業員は支給の対象外となるので、経営状況によって休業をお願いせざるを得ない場合は「休業」を選びましょう。

休業は事前の準備が比較的容易であるため、機動的な対応としておすすめです。

教育訓練

職業に関する知識や技術の向上を目的とした取り組みを行う場合は「教育訓練」を利用しましょう。

従業員が所定の労働日・労働時間の中で一日業務を行わないことを条件として、講習や研修などを実施するものです。
訓練や講習の内容は、現在の業務内容に限りません。事業縮小に伴った配置転換の際に必要な内容も認められます。

普段の限られた時間では実施が難しい教育訓練を行うことで、従業員の意欲向上や景気回復後の事業新展開に備えられるため、積極的に実施するとよいでしょう。

出向

事業所の従業員という立場を保ちながら、他の事業主の元で働いてもらう際に利用します。

将来的に出向元へ復帰するなど、人事上のつながりを持つことを条件として一時的に事業所を退職し、出向先の事業所で勤務する場合にも認められます。

  • 従業員の同意を得る
  • 出向先の労働条件を明確にする
  • 出向元、出向先との賃金の分担を明確にする

上記のことに気を付けて申請を行いましょう。
出向元、出向先のどちらかが100%賃金を負担する場合は対象外となりますので注意してくださいね。

対象となる事業主

  • 雇用調整の実施

景気の変動などによってやむを得ず事業縮小を行う場合に「労使関係の協定」に基づいて、雇用調整を行う事業主が対象となります。

例年の閑散期など季節による景気変動や、事故や災害などによって被害を受けた場合には対象になりません。

  • そのほかの要件

そのほかの要件として、雇用保険の適用事業主であること、不備のない申請書を速やかに提出すること、労働局などの実地調査を受け入れることが挙げられています。

支給対象となる労働者

対象となる事業主に雇用されていて、雇用保険被保険者である従業員(労働者)が対象者です。

対象の事業元での雇用期間が6か月未満である場合や、雇用保険被保険者であっても日雇い労働者は対象外となりますので注意しましょう。

受給額

受給額は以下の通りです。

  • 休業、教育訓練の場合

教育訓練、もしくは休業を実施した際の賃金相当額に助成率を乗じた額になります。
中小企業の助成率:2/3
大企業の助成率:1/2

1人1日あたりの雇用保険基本手当日額の最高額が上限です。

  • 出向の場合

出向前の通常賃金の1/2を上限として、出向元での従業員の賃金に対する負担額に助成率を乗じた額が支給金額です。助成率は教育訓練・休業と同様になります。

1人1日あたりの雇用保険基本手当日額の最高額に330/365を乗じた金額が上限です。

特例措置|助成率と上限額引き上げ

新型コロナウィルス感染症の影響を受けて経営が悪化している事業に関しては、特例措置が適用されます。
要件に当てはまる場合、引き上げられた助成率及び支給上限金額での受給が可能です。

特例措置の期間

2020年4月1日から2021年9月30日までの期間を1日でも含む締め切り期間での雇用調整の実施が対象となります。

特例措置の支給対象となる事業主

  • 新型コロナウィルス感染症に伴って事業が縮小している
  • 直近1か月の売上高、もしくは生産量が前年同月比で5%以上減少している
  • 労使間協定に基づいて休業を実施、休業手当を支払っている

上記のすべてに当てはまる事業主が対象です。対象の労働者に関しては、通常の雇用調整助成金の対象者と同様となります。

受給までの流れと申請方法

画像出典:厚生労働省

  1. 雇用調整(休業/教育訓練/出向の計画)を検討し、労使間協定を締結
  2. 雇用調整を実施
  3. 実績に基づいて申請書類を提出
  4. 労働局による審査
  5. 支給決定、支給額の振り込み

申請書類は支給対象期間ごとに提出する必要があります。
※対象期間とは、事業主自らが決めた1年間です。

申請方法と書類の提出期限

書類は「休業・教育訓練・出向」のいずれかを行った対象期間の翌日から2か月以内に、都道府県の労働局かハローワークへ速やかに提出をしましょう。
締め切りを一日でも過ぎてしまうと、申請書を受け付けてもらえません。

なお、出向を実施する場合は出向先へ書類準備の協力をお願いする必要があります。
検討している段階で、あらかじめ話し合いをしておきましょう。

まとめ

今回は雇用調整助成金について詳しくお伝えいたしました。

補助金や助成金の申請は工数がかかるという印象があるかもしれませんが、雇用調整助成金は要件が比較的優しいのが特徴です。

また、助成金は補助金よりも審査が通りやすい傾向にありますので、雇用解雇に悩まれている方はぜひ申請を検討してみてはいかがでしょうか。

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