組織開発に役立つ基本的な手順とは|わかりやすいフレームワークや企業の事例を紹介

経営の行き詰まりを解決したいと考えたとき、「組織開発」という言葉をよく耳にしたり、インターネット上で目にしたりすることはありませんか?

しかし組織開発と聞いても何を目的とすればよいのか、具体的にどのような行動をすればよいのかイメージが湧かないという方も多いでしょう。

今回は、そもそも「組織開発」とは何なのか、何からはじめるべきなのかを詳しくまとめました。

組織開発で用いられる手法の中でも、比較的理解やすいフレームワークや、実際に企業で組織開発を行い成功した事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

組織開発とは|組織内の力を最大化させるための長期的な手法

定義は様々ですが、主に組織内の「人」や「グループ」それぞれへ働きかけ、組織全体のパフォーマンスを向上させるための手法のことを指します。

具体的には上司と部下の対人関係や、部署間などへアプローチを行い、帰属意識の高いひとつのチームを作り上げるような取り組みです。

個々の能力が高くても、チームとして力を発揮できなければ、組織全体のパフォーマンスは最大限発揮できません。

組織開発を行い組織を成長させることは、結果として企業の売上向上や大きな成果へと繋がるのです。

人材開発との違い|人材開発は個人への施策

組織開発と並んでよく耳にするのが「人材開発」ではないでしょうか。
違いを一言で表すとすれば「個人への施策(人材開発)」か「組織全体への施策(組織開発)」かの違いといえます。

人材開発では、主に個人の能力を引き出すための施策を実行します。例えば研修によるスキルの向上や個人との面談による悩みの解決などです。

一般的に、新入社員は入社後すぐに社員研修を行いますが、研修が終了してもなかなか社内で馴染めなかったり、業務を上手く進められなかったりする社員もいますよね。

そのような場合に有効的なのが人材開発です。新入社員に限らず、日々業務を進めていく中で個人に問題がある場合には人材開発を行います。

組織開発を実行するための基本的な5ステップ

組織開発と聞いても、具体的にどのような手順を踏んで進めていくのかというイメージが湧きにくいかもしれません。基本的な動きとしては、以下の5ステップになります。

  1. 組織の理想とする姿、目的を明確にする
  2. 問題を洗い出して施策を決める
  3. 小規模で施策を実行する
  4. 効果検証と再実行を繰り返す
  5. 仕組みを定着させる

ひとつずつ項目の内容を理解し、計画を立ててみるとよいでしょう。

1.組織の理想とする姿、目的を明確にする

組織開発をはじめる上で重要となるのが、組織の理想とする姿と組織開発を行う目的を明確にすることです。

組織開発は長期的に実行していくので、常に目的のために動くという意識を持っていなければ、形骸化してしまう可能性があります。

組織の理想とする姿に到達するには、しっかりとサイクルを回していくことが大切です。そのため、組織開発を行う目的はしっかりと定めておく必要があります。

2.問題を洗い出して施策を決める

ステップ2では施策を決定します。施策を決定する前に、まずは「理想とする姿」に対する現状を把握し、問題を洗い出しましょう。

そして問題に対する課題や施策を考え決定します。施策は「何を」「いつまでに」を明確にし、綿密な計画を立てることが大切です。

3.小規模で施策を実行する

施策を実行する際は小規模で着手するのがよいでしょう。いきなり組織全体に実行してしまうと、取り返しのつかない失敗となってしまう可能性があります。

はじめは組織の中でも一部のグループに対する施策から行い、前向きな成果が得られてから組織全体への施策に移るのが有効的です。

4.効果検証と再実行する

組織開発は施策を実行するだけではあまり意味がありません。効果検証を行いしっかりと計画を追いましょう。

この段階では、効果検証の結果と向き合い精度を高めることが重要です。施策を定期的に振り返り、失敗を活かして改善に注力しましょう。

また、チームワークを高めるために、施策を実行しているグループ内で結果を共有するのも効果的です。

5.仕組みを定着させる

施策の精度を上げ、完成したら組織全体へと展開します。もちろん小規模での実践で成功したからといって組織全体へ展開して終わりではいけません。

効果検証までを行いながら、さらに精度を高める動きが大切です。目的を果たす頃には、ひとつのチームが完成していることでしょう。

組織開発で重要なポイント|目標や目的を明確化し浸透させる

組織開発の基本的な流れを解説しましたが、重要となるのは組織全体が同じ方向に向かって業務に取り組むことです。

そのためには、目標や目的を組織全体で理解し、把握する必要があります。

なかには「なぜやらなければいけないのか」「やる意味はあるのか」と疑問を持ってしまう社員もいるため、そうなってしまうとチームワークは上手くいきません。

士気を高めるための一歩として、まずはグループ内の目標、目的を明確化し浸透させることで、その後の施策実行時にも効果を発揮します。

わかりやすい組織開発のフレームワーク3選

組織開発を行うにあたり、基本的な流れの中に取り入れることで効果的とされているフレームワークがあります。

フレームワークとは開発や運用、意思決定を行う際の基礎となる思想や規則などの「構造」です。

組織開発におけるフレームワークには、実に様々な種類が存在していますので、今回はその中でも比較的わかりやすいと思われるフレームワークを3つに厳選してご紹介します。

ミッション・ビジョン・バリュー

使命や目的(ミッション)、理想とする将来像(ビジョン)、価値提供(バリュー)の3つで構成される経営方針です。

ミッション、ビジョン、バリューを明確化し組織の指針とすることで、社員にとって目指すべき方向性がわかりやすくなり、モチベーションの向上にも繋がります。

また、これらは社会貢献を含めて慎重に考えるのが重要です。

変革の8段階

変革の8段階は、ハーバード大学教職員として終身雇用の権利を得た「ジョン・コッター氏」が提唱する変革のプロセスです。

失敗の中でブラッシュアップされた8段階のプロセスを順番に実行していくことで、戦略的な変革を試みるという内容になります。

  1. 危機感を高める
  2. 変革のための推進チームを立ち上げる
  3. 適切なビジョンを掲げる
  4. ビジョンの共有を徹底する
  5. 自発的な行動を促す
  6. 短期的な成果実現のために計画を策定し実行する
  7. さらに変革を進める
  8. 変革を定着させる

上記8段階の項目は、「変革の8段階」のプロセスにおける変革のテンプレートのようなものです。

ジョン・コッター氏の有名な著書として「リーダーシップ論」があります。
8つのプロセスに沿って忠実に実行をしていけば、リーダーシップにあまり自信がないという経営者の方でもスムーズに組織開発が進められるかもしれません。

will・can・must

仕事に対するやりがいやモチベーション維持のために必要とされる3つの要素で構成されるのが「will・can・must」と呼ばれるフレームワークです。

will・can・mustではこうなりたい、こうしたいという目標(will)、できること(can)、やらなけれないけないこと(must)の3つを明確化し、それらをもとに計画の策定と実行を行います。

3つの要素を明確にすれば、問題や課題を見つけやすくなり、組織開発も進めやすくなるでしょう。

企業事例「ヤフー株式会社」|1on1の導入や専門部署の設置

大手SNSが次々と誕生し市場が急速に変化していく中、それまで大ヒットするようなサービスを生み出せていないことに危機感を覚えた「ヤフー株式会社」では、2012年に組織開発を開始しています。

ヤフー株式会社は組織開発の専門チームを立ち上げ、約5000人もの社員がいるにもかかわらず、時間を惜しまずに1on1ミーティングを実施しました。

コーチングのトレーニングを受けた上司が部下へ適切なフィードバックを行い、部下は上司の1on1ミーティングに対して評価をします。

上司と部下の対人関係が良好であれば、チームとしての動きにも効果が反映されるため、1on1ミーティングの品質向上には特に力を入れていたようです。

また、定期的に社員を部署移動させてローテーションすることで、視野も広がります。

長期にわたり大規模な組織開発を行った結果、ひとりひとりが一員として成長し、組織という大きな土壌を作り上げることができたのではないでしょうか。

まとめ

今回は組織開発の基本的な手順や、組織開発に利用できるフレームワークについて詳しく解説しました。

組織開発を成功させるためには、序盤の目的や目標の明確化とチームへの浸透が大切なポイントとなります。

次のステップに移った段階であっても、常に目標や目的は見失わないようにしっかりと捉え取り組みましょう。

タグ一覧